久しぶりに読書している。

最近の読んでいる本について。あるいはその他のこと。

「幸福論 (第一部)」 ヒルティ 岩波文庫

アランの「幸福論」、ラッセルの「幸福論」と並び称されることのあるヒルティの幸福論。他の2冊とは一線を画し、極めて宗教色の強い著作となっていた。

 

ギリシャ哲学やキリスト教の話が続く。結局は、キリスト教の原点回帰、神を信ずることにより内的成長を遂げて幸福をつかむことを主眼としている。

 

そもそも彼のいう幸福は、外部のいかなる状況にもよらず平安な心を失わないという状態にあり、一般人にとっては極めて難しい。現世の富とは両立しない道であり、非常に厳格な言葉が並んでいる。

 

幸福に至るためには、むしろ不幸が欠かせない試練となるということで、本書は実に人を選ぶ作品だと思わされた。しかし、個人的にはひどい不運が長く続いた後、明らかに自分の内面が変化した経験があるので、いろいろな「幸福論」の中ではヒルティのが最も心に響くこととなった。

 

日本でいえば、「艱難汝を玉にす」とか、「憂きことのなおこの上に積もれかし 限りある身の力試さん」といった言葉を思い出す。安楽な人生を望むことは真の幸福につながらないし、神への信仰抜きにした哲学は厭世主義になってしまうという趣旨であった。第二部と第三部はこれから読む。

「カラマーゾフの兄弟(上)」 ドストエフスキー 新潮文庫

「世界文学屈指の名作」というキャッチフレーズに惹かれて、とりあえず頑張って上巻は読み終わりました。正直、現時点では「何が何やら・・・」という感想です。

 

素っ頓狂な道化の親父、狂暴な放蕩者の長男、理性的だがやや冷たい印象の次男、信心深く誰からも好かれる三男の話ですが、状況がまだなかなかわかりづらい。

 

ちょいちょい出てくる「何しろカラマーゾフだから」「カラマーゾフの血が流れてるんだ」とか、「カラマーゾフ」っていうだけで何かを象徴するような名称なのかしらん。呪われた家系みたいな扱いになってる。あと、キリスト教についての難しい語りが多い。「大審問官」は結局、神、キリスト、教会のいったいどれを批判していたのだろう。一度で理解するのは厳しいと感じた。

 

はてさて、頑張って中下と読み進めるべきか。ちょっと自分には荷が重い作品だったかもしれない。ロシア文学でも「アンナ・カレーニナ」は長くてもわりと面白く読み進められたのだけど。

「未来の年表」 河合雅司 講談社現代新書

日本の人口減少がネットニュースでも毎日取り上げられるようになって、よく引用される本書を購入してみた。

 

世に出たのが2017年6月、7年も前のことになる。実はコロナの起きる前なので、その影響が加味されていないのが残念ではあるが、本の最初の方は検証可能だ。

 

「2018年国立大学が倒産の危機へ」というのは、いくつかの有名な国立大の統合という形で現れた。「2019年IT技術者が不足し始め、技術大国の地位揺らぐ」IT技術で日本が外国に勝っていたことがあったっけ・・・?技術大国と言われていたのは何十年も前のような気がする。個人的には、日本製品に対する信頼はとっくの昔にない。「2021年介護離職が大量発生する」うーんあまり報道で見た記憶にないがそうなのかなあ?

 

そして今年。「2023年企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる」とあるが、むしろコロナ禍が終息し採用数は復活してきているのではないだろうか。業界によりけりだろうが、むしろ人手不足の方が深刻な模様。

 

最後の「日本を救う10の処方箋」、いいこと書いてあるが、この本が出て6年経った今思うことは、日本政府には無理無理。純粋に日本国民のために一致団結して何かをするどころか、真逆の方向にしか進んでいないように見える。たいていのことはほったらかし、弱者切り捨てで庶民のよくわからないところにお金が流れていくという状況がますます確固たるものになるだろう。だから、この本の年表よりもっと前倒し、あるいはもっとひどいことになるんじゃないかな。知らんけど。

「悲しみの秘義」 若松英輔 文春文庫

書店でたまたま見かけて購入。元は日本経済新聞に連載されたエッセイとのこと。

 

愛する人を失った悲しみ、などを中心にしていろいろな作家や詩人の文章の奥にある思いを読み解いたり、さらなる思索へといざなってくれる本。

 

こうした文章は、多くの若い人にはまだよくわからないのではなかろうか。年齢を重ねて、別れや喪失といった経験を積んで初めて共感できるものだろう。それでも、この著者のような心境にはなかなか至らないと思う。

 

帯には「もう死にたいと思った時に読む本」とも書かれていた。誰にもわかってもらえない悲しみを慰めるために、一人静かにこうした本を読むのもいいのかもしれない。

「2025年日本はなくなる」 内海聡 廣済堂出版

なかなかびっくりするようなタイトルを書店で見かけたので購入。著者は医師とのこと。いわゆる陰謀論かいなと思ったが(シンボリズムに言及したあたりは胡散臭い)、説得力のある部分も多々あった。

 

日本はおかしい、と日々強く感じているのだが、具体的に言語化できなかった。ワクチンとかの医学的な話については、素人の自分には実際判断のしようがないのだけれど、水源、土地、農薬、食品などある程度データや法案の内容が提示されるテーマについては、実際日本は危機に瀕していると思わざるを得ない話だった。

 

政治がどうにも狂ってるのだが、個人にはどうしようもないし選択肢がない。メディアは明らかにどうでもいい話題ばかりを時間かけて流し、重要な件は伏せているように感じられる。この先どれほど日本が悪くなるかわからないが、この本はもう日本が滅びるのは避けられないと結論付けている。そうかもしれん。ウクライナの国民だって、数年前にはまさかこんなことになるとは思わなかっただろうし。

 

危機的状況があると知ったからといって手の打ちようがないなら、むしろ見ないふりをして自分のことだけに関心を集中するか。多くの日本人はそうしてるんだよなあ。やれやれ。

「ゲーテ詩集」 ゲーテ 新潮文庫

買っておいた詩集のうちでは、かなり読みやすかった一冊。恋の歌が多かった。

 

訳した人のうまさもあるのかもしれないが、「ようわからん」という詩が少なかった気がする。あるいは、明るい感じがするからか。読むのは苦でなかった。

 

あと何冊か詩集が残っている・・・。正直、もうお腹いっぱいになってしまった。

「汚れつちまつた悲しみに・・・・・・」 中原中也 角川文庫

書店でたまたま目に入ったので購入。表紙がおそらく「文豪ストレイドッグス」のキャラクターなので妙に目立っていた。

 

作品は意味がよくわからないものもあるが、全般に美しく感情表現が豊かなものだと感じた。30歳で亡くなったとのことだが、早熟で女性をよく愛し、神経を病んでいった天才は詩を創作するのに命を削っていたのだろうか、などと思う。

 

結局詩はあまり向いていないのかな、何人かの詩集を読んでいるが、いまひとつピンとこないというのが率直な感想。感動するまでに至らないのはたぶん芸術的感性が無いのだと思う・・・。